21世紀の森公園から見る夕日が好きです。
名護湾に沈むオレンジの光が海面を染めて、散歩中のおじぃやおばぁがベンチで黙って眺めている。ジョギング帰りにふと足を止めると、毎日見ているはずの景色なのに、やっぱり綺麗だなと思う。名護に住んでいる人間にとって、ここはそういう場所です。
その公園が今、大きく姿を変えようとしています。
「あけみおてらす」。スターバックス コーヒー、名護っ子のソウルフード「ひがし食堂」、マリンレジャー施設まで入る、21世紀の森公園の新しい顔です。工事看板には「令和8年3月31日まで」の文字。あと1ヶ月半。現場では急ピッチで工事が進んでいます。
楽しみか?と聞かれたら、正直に言います。楽しみです。めちゃくちゃ楽しみ。
でも同時に、複雑な気持ちもあります。
この開発の裏には、あの話題のテーマパーク「ジャングリア」との深いつながりがある。そのジャングリアの先行きには、不安な影がちらついている。名護の地価は上がり続け、筆者のアパートの家賃は一割上がり、学生が部屋を見つけられないという話も聞こえてくる。
スタバができて嬉しい。でも、この街はこれからどうなるんだろう。
今回は2月13日撮影の最新写真とともに、テナント情報や工事の進捗だけでなく、名護に住んでいる人間だからこそ見えている景色を、正直に書いてみようと思います。
【現地速報】3月末完成はギリギリ!?工事現場のリアルな進捗
看板の期日は「3月31日」でも、本当のスケジュールは?

現場に立つと、まず目に飛び込んでくるのが工事看板です。そこには「事業の期間:令和8年3月31日まで」とはっきり記されています。
ただし、これをそのまま「3月31日にグランドオープン!」と受け取るのは早計です。
名護市やPFI事業者の公式発表をたどると、スケジュールはこうなっています。
- 2026年3月:一部供用開始
- 2026年4月以降:テナント順次開業
つまり、3月末の時点ではすべてが完成しているわけではなく、「建物の引き渡しや一部エリアのプレオープン」にとどまる可能性が高いというのが現実的な見方です。グランドオープンは4月以降、桜の季節が終わるころになるかもしれません。
とはいえ、現場は明らかに「追い込み」の空気。平日の昼間でもクレーンが稼働し、作業員の姿が絶えません。
「海の棟」と「森の棟」、進捗にはっきり差が出ている
あけみおてらすは大きく分けて2つの建物で構成されています。現地で見比べると、その進み具合にはかなりの差がありました。

◆ 海の棟(ビーチサイド)
名護湾に面した海沿いに建つのが「海の棟」。コンクリート打ちっぱなし(RC造)の外観はすでにほぼ姿を現しており、建物の輪郭がはっきりと見えます。ここにはカフェやマリンアクティビティの受付が入る予定で、2つの棟のうち先にオープンする可能性が高いのはこちらでしょう。
海に向かって開けたテラス席が並ぶ光景を想像すると、完成が待ち遠しくなります。

◆ 森の棟(ロードサイド)
一方、国道58号線側に位置する「森の棟」は、まだ鉄骨(S造)が組み上がった段階。海の棟に比べると規模がひと回り大きく、物販やテイクアウトを中心とした複合施設になる予定です。
足場とネットに覆われた鉄骨のフレームを見上げると、「これ、本当にあと1ヶ月半で……?」という率直な感想が浮かびます。外装や内装はこれから。こちらは4月以降の開業が現実的なラインではないでしょうか。
2つの棟の進捗差を見る限り、「3月末に海の棟が先行オープン → 4月以降に森の棟が順次開業」という流れになりそうです。
テナント判明!スタバだけじゃない「鉄板」ラインナップ
工事の進捗も気になりますが、やっぱり一番知りたいのは「何ができるの?」ですよね。現時点で判明しているテナントを見ていくと、これが想像以上に「攻めた」顔ぶれなんです。
① スターバックス コーヒー 名護湾を一望する"海スタバ"

沖縄県内にはすでに複数のスタバがありますが、あけみおてらすの店舗は一味違います。入居先は海沿いの「海の棟」が有力。目の前に名護湾が広がるロケーションで飲むコーヒーは、それだけで特別な体験になるはずです。
沖縄のスタバといえば、北谷の「美浜アメリカンビレッジ店」や那覇の「沖縄本部町店」など、ロケーションに個性を持たせた店舗が人気を集めてきました。ここ名護にも、「わざわざ行きたくなるスタバ」がまたひとつ誕生することになります。
ドライブの休憩に、朝の散歩のついでに、あるいは夕暮れの名護湾を眺めながら――。使い方は無限大です。
② ひがし食堂 名護っ子のソウルフードが、海辺にやってくる

名護で「ひがし食堂」を知らない人はいないでしょう。創業1976年、名護そばやちゃんぽん、そして夏場に行列ができる氷ぜんざいで地元に愛され続けてきた老舗です。
その「ひがし食堂」が、あけみおてらすに出店します。
ただし、本店とまったく同じメニュー構成にはならない模様。海辺の立地に合わせて、看板メニューの「ぜんざい」を軸にした、ビーチサイド特化型のメニュー構成になるとのこと。
真夏の海遊びのあとに食べるひがし食堂のぜんざい――想像しただけで最高じゃないですか。本店の味はそのままに、ロケーションという最強のスパイスが加わります。
③ マリンクラブベリー(株式会社シーサー) 海が「遊び場」に変わる

沖縄本島で最大級の実績を持つマリンレジャー企業「株式会社シーサー」が運営するマリンクラブベリーも出店予定です。
シュノーケリングやダイビングだけでなく、海上アスレチックなどファミリー向けのアクティビティも計画されています。これまで21世紀の森ビーチは「眺める海」でしたが、あけみおてらすの開業によって「遊べる海」へと変わりそうです。
お父さんとお母さんはスタバでのんびり、子どもたちは海上アスレチックではしゃぐ――そんな週末の過ごし方が現実になります。
④ THE SURF BEACHSIDE TERRACE 海と森に包まれるウェディング

公園内の高台「ヒルトップゾーン」には、THE SURF BEACHSIDE TERRACEと名づけられた結婚式場・レストランが誕生します。
海と森、その両方を見渡せるロケーションにチャペルとレストランが並ぶ計画で、ウェディングだけでなく記念日ディナーなどにも使えるスポットになりそうです。挙式の写真は間違いなく「映え」ます。
普段使いではないかもしれませんが、名護にこういう場所ができること自体が、街の格を一段引き上げてくれる存在になるのではないでしょうか。
スタバでコーヒー、ひがし食堂でぜんざい、子どもは海で大はしゃぎ。1日いても足りないくらいの「名護の新しい休日」が、このラインナップから見えてきます。
なぜ今?ジャングリアとの深い関係、そして地元民が感じている「不安」
スタバにひがし食堂、マリンレジャー。
テナントの華やかさに目を奪われがちですが、ここで少し視点を引いてみましょう。なぜこのタイミングで、名護市がこれほど大規模な公園整備に踏み切ったのか。その答えを探ると、沖縄北部で進むもうひとつの巨大プロジェクトにたどり着きます。
キーワードは「ゆがふホールディングス」
あけみおてらすの整備は、名護市が民間の力を活用して公園の魅力を高める「Park-PFI事業」として進められています。その代表企業が、名護市に本拠を置く「ゆがふホールディングス」です。
この名前にピンときた方もいるかもしれません。
2025年7月、沖縄北部の今帰仁村に開業し大きな話題を呼んだテーマパーク「ジャングリア(JUNGLIA)」。その運営会社にも、ゆがふホールディングスは出資企業として名を連ねているのです。
つまり、ジャングリアとあけみおてらすは、同じ資本の流れの中にあるプロジェクト。これは偶然ではありません。
「素通りの街」から「滞在する街」へ、描かれたシナリオ

両者の関係を一言で表すなら、こうなります。
ジャングリア=目的地(デスティネーション)
あけみおてらす=玄関口(ゲートウェイ)
ジャングリアで遊んだ翌日に、名護市内でブランチや海遊びをして帰ってもらう。これまで美ら海水族館への「通過点」だった名護を、「もう1泊、もう半日」滞在する街に変える。あけみおてらすには、そういう役割が期待されています。
シナリオとしては美しい。でも、地元に住んでいると、素直に喜べない部分もあるんです。
でも正直に言うと――ジャングリア、大丈夫なの?

実はジャングリアの風向きは、開業当初の熱狂からだいぶ変わってきています。
運営会社のジャパンエンターテイメントは、2025年6月期の決算で約50億円の赤字を計上しました。開業前の先行投資が主因とはいえ、楽観できる数字ではありません。開業初日の来場者はわずか500人。口コミサイトの評価は荒れ、運営元の刀が手がけていた東京のイマーシブ・フォート東京は2025年12月に閉鎖が発表されました。
専門家の間でも「2年目以降に来場者が半減するリスク」を指摘する声があり、年間100万人という目標がどこまで現実的なのか、見通しは不透明です。
あけみおてらすの「ゲートウェイ」構想は、ジャングリアが人を呼び続けることが大前提。もしジャングリアが失速したら、あけみおてらすの集客シナリオも根本から揺らぐことになります。
1LDKで6万円。これが今の名護です
とはいえ、名護の変化はジャングリアだけが原因じゃありません。ジャングリアが開業する前から、少しずつ人は増えていました。北部への移住者が増え、観光客の流れが変わり、街に新しい顔ぶれが見えるようになった。その変化は、数字にもはっきり表れています。

名護市の公示地価は前年比+2.89%の上昇。沖縄県全体の住宅地の地価上昇率は全国トップの+7.3%。北部ではジャングリア関連の開発期待もあり、坪単価が数倍に跳ね上がった場所もあります。
これ、数字で見ると「名護が注目されている」と前向きに読めます。
でも、ここに住んでいる人間の実感はちょっと違います。
ネットの移住記事を見ると、今でも「名護は家賃が安い」「1LDKで5万円」と書かれていたりします。
もう、その情報は古いです。
筆者の部屋は1LDKで月6万円。しかもこの1年で家賃が一割上がりました。周りでも「更新のタイミングで上げられた」「新築は7万、8万が当たり前」という声をよく聞きます。
名護の街を走ると、あちこちで新しいアパートが建っているのが目に入ります。需要があるから建てている。それ自体は自然なことです。でも最近、気になることがあります。建設中のまま、工事が止まっている現場が目立つんです。資材高騰なのか、人手不足なのか、理由はわかりません。ただ、鉄骨がむき出しのまま動かないアパートを見ると、この建設ラッシュ自体がどこまで持続するのか、少し不安になります。
そして今、もっと深刻な話を耳にするようになりました。名護の学生がアパートを見つけられないんです。
名桜大学をはじめ、名護には学生が暮らす街としての顔があります。でも、地価の上昇と空き部屋の消失が重なって、部屋を探しても選択肢がほとんどない。家賃が上がったうえに、そもそも物件自体がない。観光や開発の波が、一番お金に余裕のない若い世代を直撃しているという現実があります。
「程よい田舎」は守れるのか

名護に住んでいる人間、あるいは移住してきた人間の多くが、この街の「程よい田舎感」に惹かれているはずです。
コンビニもスーパーもあるけど、10分走れば海がある。都会みたいに見栄を張らなくていい。21世紀の森公園を散歩すれば、顔見知りのおじぃに会える。そういう空気感が、名護の一番の魅力でした。
でも最近、その公園の人の密度が明らかに変わってきています。週末だけじゃなく、平日でも以前より人が多い。散歩コースの雰囲気がじわじわと変わっている。あけみおてらすが開業したら、この流れはさらに加速するでしょう。
もちろん、賑わうことは悪いことじゃない。でも、「静かに海を眺められる公園」と「スタバがあって観光客で賑わう公園」は、同じ場所でも別の場所です。
スタバができるのは嬉しい。ひがし食堂が海沿いに来るのも楽しみ。でも、その裏で家賃が上がり、学生の住む場所がなくなり、アパートの工事が止まり、慣れ親しんだ公園の空気が変わっていく。開発の恩恵と、暮らしへの負荷は、いつもセットでやってくる。
名護に住んでいる人間として、それは正直に書いておきたいと思いました。
駐車場は?アクセスは?――地元民として正直に心配していること
ここまで読んで「早く行きたい!」と思った方、ちょっとだけ現実的な話をさせてください。
72台。この数字の意味がわかりますか

あけみおてらすエリアに用意される駐車場は約72台分。
スタバとひがし食堂が入る施設で、72台です。正直に言って、全然足りないと思っています。
21世紀の森公園は、もともと利用者が多い公園です。週末の少年野球、ウォーキング、ビーチでのBBQ。普段から駐車場はそれなりに埋まっています。そこにスタバ目当ての車、マリンアクティビティの家族連れ、SNSで見て来た観光客が加わったら、どうなるか。オープン直後の週末は想像しただけで渋滞が見えます。
もっと言えば、この公園の周辺には名護市役所もある。平日は公共施設の利用者もいる。「観光客で埋まって地元民が停められない」という状況が、普通に起きると思います。
訪問を考えている方は、こんな感じで動くのがよさそうです。
- 平日の午前中が狙い目。開業直後の週末は覚悟が必要
- 名護市街地から徒歩・自転車も十分あり。市役所周辺からなら徒歩10分程度
- 混雑状況は開業後にSNSでリアルタイム情報をチェック
そして地元民のみなさん。しばらくは「いつもの公園」のつもりで行くと痛い目を見るかもしれません。落ち着くまでは時間をずらすのが賢明です。
それでも、目的別に使い分ければ楽しめる
あけみおてらすは、エリアによって性格がまったく異なります。「今日はどう過ごしたいか」で行き先を決めると、満足度はぐっと上がるはずです。
◆ サクッと寄りたい → ロードサイドゾーン(森の棟)
国道58号線から一番アクセスしやすいのがこちら。物販やテイクアウトが中心なので、ドライブの途中にコーヒーを買ってさっと出発する使い方にぴったり。北部観光の行き帰りに立ち寄るならここ。
◆ ゆっくり過ごしたい → ビーチサイドゾーン(海の棟)
スタバ、ひがし食堂、マリンアクティビティが集まる"本丸"エリア。名護湾を眺めながらのんびりコーヒーを飲んだり、子どもと一緒に海で遊んだり。半日〜1日かけてゆっくり楽しむなら、迷わずこちらへ。
◆ 特別な日に → ヒルトップゾーン
高台に位置するチャペル&レストラン「THE SURF BEACHSIDE TERRACE」があるエリア。結婚式や記念日ディナーなど、特別なシーンでの利用がメインになりそうです。
まとめ 名護の夕日は、これからも綺麗だろうか

2月13日の現地取材で見えたのは、完成に向けてラストスパートに入った工事現場のリアルな姿でした。海の棟はすでに建物の形が見え、森の棟は鉄骨が空に向かって組み上がっている。現場では地元・屋部土建の看板が存在感を放ち、名護の企業が名護の未来を作っている光景が広がっていました。
焦点は、3月末の「一部供用開始」でどこまでオープンするか。海の棟が先行する可能性が高そうですが、正式なアナウンスはこれからです。
楽しみなことは、たくさんあります。
スタバのコーヒー片手に名護湾を眺める。ひがし食堂のぜんざいを海風の中で食べる。子どもたちが海上アスレチックではしゃいで、帰りたがらない。そんな週末が来ると思うと、やっぱりワクワクします。
でも、こうも思うんです。
ジャングリアは本当に人を呼び続けられるのか。あけみおてらすのテナントは、何年先も元気にやっていけるのか。地価はこのまま上がり続けるのか。家賃が上がって、学生がアパートを見つけられない街は、本当に「発展している」と言えるのか。
開発の光は眩しい。でも、その影もちゃんと見ておきたい。
筆者はこれからも21世紀の森公園を散歩するでしょう。スタバにも行くし、ひがし食堂のぜんざいも食べる。その横で、この街がどう変わっていくのかを見続けます。
あの夕日が変わらず綺麗であってほしいと思いながら。